シリーズ「廃都紀行~Journey of Tokyo Exclusion Zone」"The BRDG."
1167x803mm
Acrylic on Canvas
2013
ターナー色彩主催アクリルガッシュビエンナーレ2017入選作品



ふたりは、その前に立ち止まり、モイラは「これは、どこか見どころがあると思うわ。これだけは、わたしも審査員と同意見よ」と、いった。
 ドワイトはいった。「わたしは、これは大嫌いです」
 「どこが気に入らないの」
 ドワイトはその絵を、 じっと見つめていた。

「なにもかもみな。わたしには、この絵は愚のこっちょうです。多少でも頭がある飛行士だったら熱核爆弾が、ぐるり一面に落ちているのに、こんな低空は飛びません。自分がふっとんでしまいます」
「だって、いい構図で、色彩もりっぱじゃないこと」
 「そりゃそうですが、図柄がなっていない」
 「これがR・C・Aビルだとすれば、ブルックリン橋がニュー・ジャージーの側にあるし、エンパイヤ・ステート・ビルが、セントラル・パークのまんなかに立っています」

 モイラはカタログをのぞいてみた。「だって、この絵はニューヨークだとは書いてないわ」 「どこであるにしろ、ばからしいです」と、ドワイトはいった。「こんなことは、あり得ようがない」そういって、息をついだ。「劇的すぎます」ドワイトは、その絵から目をそらして、あたりを、おもしろくもなさそうに見まわした。そして、「どこからどこまでも、きらいです」といった。

(ネビル・シュート「渚にて」より)


この作品の構図は作品集「ある幻想の未来」 下巻の巻末に収録した写真に似せている。
その写真は1992年に働いていたフェリー上から撮影したもので、まだ建設途中のレインボーブリッジやほぼ何もないお台場のレインボータウンが見える。
空想の絵画から過去の写真への遷移効果を狙った構図である。

シリーズのほぼ最終作となる本作品で、面積でもスケールでも圧倒的に大きい作品を残したかった。その為に限界試しの無謀な挑戦をしました。

東京湾岸エリアに立つ50以上の超高層ビルを一つの画面に収めるべくF50号のキャンバスで制作を始め、13年9月に完成。
13年12月に画面バランスを考え上方を裏面に折り込んで小さくし、P50号となった。その後15年4月細部の加筆が行われ、16年12月に前述の折り込み部を切除している。

作品集の時系列では東京タワーを描いた「The Tower」、レインボータウンを描いた「台場」の後に登場する。同一日という設定の為三作品とも空模様は嵐となっている。

このどす黒い空と禍々しい太陽に、自分が単なる廃墟を描いている訳でない事が見てとれるかと思います。

どす黒い雲の間から覗く太陽の下で海は荒れて高くなった海面は高い波を打ち寄せる。 芝浦や海岸の大部分は沈下して倉庫やビルが傾いている。沈み欠けた太陽の下では芝 浦と台場を結ぶ東京港連絡橋―レインボーブリッジは台場側の主塔が大きく傾いて南 側のメインケーブルは途切れ、桁は中間部分で崩落。この橋に通じる高架橋も波に飲ま れている。’92年に撮影した写真の構図に似せて、田町から浜松町までが視界に入ってい る。現代ではお台場に建ち並んだビルの陰になってこの様な視界は得られないだろう。 浜松町の貿易センタービルは’19年に解体、再開発が予定されており、イメージパースを 参考にガラスカーテンウォールの将来の姿とした。ヤナセ本社後の再開発マンションは、 制作中にパースが発表されなかった為、三井のマンションの外観の傾向を探りつつ予測 で描かれている。東京タワー右に見える六本木3丁目の日本IBM本社跡地の再開発ビル は、当初泉ガーデンタワーと酷似した姿になるとの発表された為そこから予測される姿 を描いたが、その後デザインが変更された為今後もこの様な景観にはならない。 (「ある幻想の未来 下巻」作品紹介より)